
「前年比4%増」だから「回復した」と言えるのか――Meaning Auditから科学哲学を訪ねる
「前年比4%増」という正しい記録から、「今期は回復した」と言えるのか。科学哲学の確証、過小決定、データと現象の区別を訪ね、データから結論までのあいだを考える。シリーズ「意味の地図をつくる」第8回、第1期の最終回。

「前年比4%増」という正しい記録から、「今期は回復した」と言えるのか。科学哲学の確証、過小決定、データと現象の区別を訪ね、データから結論までのあいだを考える。シリーズ「意味の地図をつくる」第8回、第1期の最終回。

スライドの注記は「前年比4%増」。それでも会議の参加者は、縦軸が途中から始まる赤い棒グラフを見て「大きく伸びた」と受け取った。言葉で書かれていないことを、グラフや色や矢印はどう伝えているのか。シリーズ「意味の地図をつくる」第7回は記号論を訪ねる。

五年前の報告書に残された「今後、必ず改善します」。書いた人はもういない。私は書き手の言いたかったことを読んでいるのか、今の私にとっての意味を読んでいるのか。シリーズ「意味の地図をつくる」第6回は解釈学を訪ねる。

「約束します」は、約束について説明しているわけではない。言った瞬間に、約束が生まれている。言葉は情報を伝えるだけなのか。シリーズ「意味の地図をつくる」第5回は、Austin に始まる発話行為論を訪ねる。

「もう遅いですよ」と言われて、「帰ってください」とは言われていないのに、そろそろ帰った方がいいと受け取る。言われたこと以上の意味は、どうやって生まれるのか。シリーズ「意味の地図をつくる」第4回は Grice と含意を訪ねる。

同じ「もう遅いですよ」でも、来客と締切と夜更かしでは伝わる意味が違う。文そのものの意味と、文脈の中で伝わる意味は、どこで分かれるのか。調べてみると、その境界自体に議論があった。シリーズ「意味の地図をつくる」第3回は意味論と語用論を訪ねる。

友人から「今日、その店は休みだよ」と聞いて、出かけるのをやめた。自分で見ていないのに、私はそれを知ったことになるのか。私たちが知っていることの多くは、他人の言葉を通じて届いている。シリーズ「意味の地図をつくる」第2回は証言の認識論を訪ねる。

天気予報の降水確率15%は受け入れやすい。でも「彼女が彼を好きである確率は15%」と言われると、その15%が気になる。AIの答えを見て、私は何を知ったことになるのか。シリーズ「意味の地図をつくる」第1回は認識論を訪ねる。

意味の監査を考えていたら、周りに学問があった。認識論、語用論、解釈学、記号論、Knowledge Graph。シリーズ「意味の地図をつくる」の入口として、これから訪ねる十九の領域を一覧する探索地図。

2023年、私はChatGPTに本を書いてもらった。2026年、もう一度AIと本を書いた。AIの利用量は増えたのに、原稿への関与はむしろ深くなった。変わったのは関与の量ではなく、何にコミットしていたかだった。

生成AIで網羅的な文章を作るコストがほとんどなくなった。情報をたくさん書けること自体は、もう希少ではない。未理解からの省略と、理解からの省略は外形が似ているが、中身はほとんど反対である。

自分の記録をAIに読み込ませて「自分AI」を作ると、記録の中にある他人の発言まで本人の思想として語り始める。これは検索精度とは少し違う問題で、Speaker Attribution・Stance・Commitment・Condition・Temporal Versioningを分けて持つ必要がある。